2015-07-01から1ヶ月間の記事一覧

僕の体を濡らした雨は、ポタポタと滴り落ちていく。鼻の先から、顎の下から、胸の辺りから。太陽の沈んで黒雲で覆われた空は、地響きを起こしながら光と共に僕を追いつめようとしているようだ。今朝の予報では、夜は星が見える程晴れるだろうと言われていた…

泡沫の彼 2

「退院おめでとう」 彼に別れを告げて一週間後に決まった退院の日、病院を出た私の前に忽然と姿を現したのは、意外にも彼だった。退院祝いも持たずに手ぶらだけど、彼がここに来た事が私にとって最高の贈り物だ。 状況を飲み込めず、本当に智希なのか何故こ…

泡沫の彼 1

交通事故に遭った夜、事故現場が病院と近かったため即座に応急処置を受ける事ができ、三日後の昼間に、私は意識を取り戻した。だが、そこからが問題だった。外傷は軽度のものだったが、事故に遭った時のことを全く覚えていない。医師に覚えている事はないか…

ユラユラに情愛 2

二十四歳の私に出来た三歳年下の彼との初めてのデートは、十時に駅前の時計の下で落ち合う約束をした。私と彼には初々しさや緊張感なんてまるで無い。私は自分に彼氏というポジションの人物がいるならそれで良いと考えているし、彼は日本にモテるチャラ男ラ…

ユラユラに情愛 1

「話があるなら早くしてほしいんだけど」 付き合い始めて一ヶ月になる恋人に、行きつけのカフェに呼び出された。いつもと違うのは、彼が身にまとった空気と、怒りのちらつく強ばった面持ち。何を話されるかなんて、安易に想像できていた。まただと、もう悲し…